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コラムColumn

失踪社員への対応Column

失踪社員の例としては、自然災害事故(津波など)、レジャー事故(登山、海難)、私的トラブルによるケース、不明(事件など)など、様々な理由のケースがあります。
先ず、会社側としては、失踪社員の消息確認に全力を尽くす必要がありますが、最近の例として、SNSによって国内を放浪している状況が確認できるが、会社からの携帯電話・メール連絡には全く反応しないというケースがありました。

このようなケースへの対策として、就業規則に、一定期間を超える無断欠勤を自然退職とする規定(下例)があれば、対応は簡単です。

第〇条 (退 職)
従業員が、次の各号のいずれかに該当するときは退職とし、各号にそれぞれ定められた日を退職の日とする。
(1)本人が死亡したとき。…死亡した日
(2)定年に達したとき。…定年年齢に達した日の属する年度の末日
(3)休職期間が満了しても休職事由が消滅しないとき。…休職期間満了の日
(4)従業員が行方不明となり、30日以上連絡が取れず、解雇手続きをとらないとき。…連絡が取れず30日を経過した日

上の各号(1)~(4)の退職は、労使双方またはいずれかの「意思表示」を必要とせず、予め決められている就業規則に従って、退職となる「自然退職」です。

ところが、今般の会社は、このような例が無く、このような事態を想定していないため、上記のような規定がありません。そのような場合にはどうするかが問題になります。

あらためて、退職の種類を整理してみます。

辞職 従業員の退職意思表示による退職
(会社が認めなくても14日経過すれば民法627条により退職)
合意退職 労使双方の合意による退職
(従業員からの退職願や会社からの退職勧奨からの合意)
解雇 会社側の意思表示(解雇通告)による退職
普通解雇 ‥ 心身の不良、能力不足 など
懲戒解雇 ‥ 懲戒解雇事由に該当する場合
(労働基準法により、解雇制限や解雇予告義務がある)
自然退職 あらかじめ決められた退職条件による退職(意思表示不要)
(定年、休職期間満了、死亡、失踪など)

懲戒解雇の可能性

まず、事案の内容(不届きな無断欠勤で、会社の連絡を無視している)から、懲戒解雇が考えられますが、解雇である以上、以下の問題があり、現実には用いられません

  • (1) 解雇の意思表示(本人に伝える)が不可能な為、公示送達といった裁判所による厄介な手続きが必要
  • (2) 弁明の機会を与える等の懲戒手続きが現実的に不可能
  • (3) 解雇予告または解雇予告除外認定が必要

黙示の退職意思表示による合意退職

もっとも一般的な方法は、失踪者から退職の意思表示があったものとみなす(黙示の意思表示)だと思います。
その場合は次のような書面を内容証明郵便で送付します。

貴殿の退職手続きについて

貴殿は〇〇年〇月〇日より、当社に出社されず、当社からの連絡にも応じない状況が現在に続いております。今般の状況は、貴殿に雇用契約を解消する意思があるものと推定することが合理的であると考えます。
つきましては、〇〇年〇月〇日までに、出社されない場合、もしくは出社ができないご事情の書面による連絡なき場合は、貴殿から同日付けの退職意思の表示が当社に対してなされたものと扱い、退職手続きをとらせていただきます。

このように失踪社員の自然退職規定が無い場合は、速やかに雇用契約の解消を確定できず、社会保険料の発生が続くことが考えられますので、規程の整備の大切です。