平成27年改正労働者派遣法の影響と対策

今回2015年9月30日施行の改正労働者派遣法により派遣事業の健全化と、派遣労働者の雇用安定とキャリアアップのための措置が強化されました。厚生労働省の業務取扱要領※に則し、適切な対応が必用です。
※正式には「労働者派遣事業関係業務取扱要領」といい、この中に具体的な行政判断基準が示されています。
 
また、2015年10月1日より施行の、違法派遣に対する労働契約申込みなし制度に際しては、派遣労働者にも直接的な影響があるため、新たな期間制限や偽装請負に関する充分な対策と派遣労働者等への適切な説明を行っておくことが必用です。

■派遣元への影響と対策
 
1.事業許可制関連
 これまでは、常時雇用される労働者のみを派遣する特定派遣事業は「届出制」とされてきました。
 今回改正法では、特定派遣事業という区別を無くし、一律に「許可制」なります。

派遣事業の許可を受けられない事由(欠格事由 第6条)
 一定の刑罰を科されたり、許可の取消等から5年経過していない者、暴力団関係、民法上の行為能力が制限されている者など
派遣事業の許可の基準等(第7条)
(1)専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと
(2)派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること
 ①派遣労働者のキャリア形成を支援する制度※を有すること ※具体的な基準がは下記3を参照
 ②教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること
 ③労働者派遣契約の期間終了のみを理由として解雇できる旨の規定が無いこと
 ④次の派遣先が見つからない等使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合、労基法26条に基づく休業手当を支払う旨の規定があること
 ⑤派遣労働者に対して安衛法59条に基づき義務づけられている安全衛生教育の実施体制を整備していること
 ⑥雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行ったことを労働局から指導され、それを是正していない者でないこと
(3)個人情報を適正に管理し、及び派遣労働者等の秘密を守るため必用な措置が講じられていること
(4)事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること ※以下の内容で検討されています
 ①資産要件(基準資産額 ≧ 2,000万円 × 事業所数 現預金 ≧ 1,500万円 × 事業所数)、事業所の広さがおおむね20㎡以上など
  小規模派遣事業主の暫定的配慮措置 ※平成28年9月30日以降は経過措置により特定労働者派遣事業を行っている者に限定
  常時雇用派遣労働者が10人以下の中小企業事業主(基準資産額:1,000万円、現預金額:800万円 当分の間)
  常時雇用派遣労働者が5人以下の中小企業事業主(基準資産額:500万円、現預金額:300万円 施行後3年間)

 

許可申請時の添付書類には、次のものが追加されます(規程等の該当箇所の写し)
・派遣労働者のキャリア形成の支援に関する規程等(教育訓練時間の労働時間性、キャリア形成の事務手引き等)
・派遣労働者の解雇に関する規程
・派遣労働者に対する休業手当に関する規程

 
経過措置:施行日(2015.9.30)に特定派遣事業を営んでいる事業者は3年間(2018.9.29まで)、特定派遣事業(常時雇用される派遣労働者のみ)を営むことが可能です。
※その場合、その後新たに選任する派遣元責任者は派遣元責任者講習を受講して3年以内の者でなければなりません
※事業所を新設する場合は、当該事業所での労働者派遣事業の許可を得なければなりません
※小規模派遣事業種の暫定的配慮措置(上記)を受けることができます
 
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2.派遣期間制限の変更に伴う対応
現行法の「業務単位」の期間制限から「事業所単位」と「派遣労働者単位」の期間制限に変更になります。
ただし、無期雇用の派遣労働者等に係る労働者派遣は、いずれの期間制限も適用されません。※

※適用除外の派遣労働者(第40条の2第1項)
a)無期雇用の派遣労働者(派遣元に期間の定めなく雇用されている派遣労働者
b)60歳以上の派遣労働者
c)有期プロジェクト、日数限定業務、産前・産後休業等の代替者としての派遣労働者

 

● 事業所単位の期間制限
派遣先は事業所その他派遣就業の場所※1ごとの業務について3年を超えて※2継続して派遣労働者を受入れてはならない
ただし、この期間は過半数労働組合等への意見聴取を行うことによって3年間更新できる(第40条の2を要約しました)
※1 事業所その他派遣就業の場所:工場、事務所、店舗等場所的に他の事務所その他の場所から独立していること
経営の単位として人事、経理、指揮監督、労務の態様においてある程度独立性を有すること
一定期間継続し施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即し判断する(業務取扱要領 p244)
※2 新法施行日以降、最も早く締結(更新)する派遣契約の開始日が起算日となります。複数の派遣元が存在する場合は、多くの派遣契約が開始・更新されるためこの起算日は派遣先しか把握できません。そこで、派遣先から派遣元への通知義務があります。
 
● 派遣労働者単位の期間制限
派遣元事業主は派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位※ごとの業務について3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行ってはならない(第35条の3)
※組織単位:名称のいかんを問わず、業務としての類似性・関連性がある組織であり、かつ、派遣先の指揮命令者が業務の配分及び労務管理に直接の権限を有するもの。個別契約書や就業条件明示書に記載の際は、組織の名称、及び、組織の長の職名(「◯◯課長」など)を明記する必用があります。

 
経過措置: 施行日以後に締結された派遣契約(個別契約)から雇用安定措置や新たな期間制限が適用されます
※施行日前の契約には、 旧法第40条の4(抵触日後の雇用申込)、第40条の5(3年を超える派遣受入者への優先的雇用申込)が適用されます
クーリング期間: 事業所単位と派遣労働者単位の期間制限の双方に3ヶ月のクーリング期間が設けられます
※事業所単位におけるクーリングは派遣可能期間の更新手続(過半数労働組合等への意見聴取を含む)を回避する目的では指導の対象になります。
全ての派遣契約が無くなった状態(くだいて言えば、派遣社員が事業所に一人も居ない状態)がクーリング期間とされます。
※派遣労働者単位のクーリングは、本人が希望しない場合はキャリアアップの観点から望ましく無いとされています
 
 ① 抵触日通知
改正法では、適用除外の派遣労働者でなければ「事業所単位」と「派遣労働者単位」の2つの抵触日が関係します。
このうちの「事業所単位」の抵触日について、派遣先から通知を受けなければ派遣してはなりません(第26条第5項)
 
 ② 影響を受ける派遣労働者への対応
旧法では専門28業務が期間制限の対象外とされていましたが、新法ではこれによる期間制限は撤廃されました。
そして、これまで期間制限の対象外だった専門28業務を行っている派遣労働者が有期雇用の場合は、あらたに3年の期間制限の対象となります。
また、この有期雇用の労働者は、改正労働契約法(2013年施行)により、労働者の申込による派遣元での無期雇用への転換ルールの対象になります。
今後の雇用方針を早期に決め、安心を与えることが重要になります。

 
 ③ 有期雇用の派遣労働者への雇用安定措置
期間を定めて派遣元に雇用される派遣労働者につき、4つの雇用安定措置が求められます。
3年以上派遣が見込まれる場合は措置義務 となり、この義務違反は、厚生労働大臣が助言・指導し、さらに措置の指示がされても尚違反した場合に許可取り消し事由になります。(第14条第1項第2号)  ※3年以上派遣が見込まれない場合は努力義務にとどまります

(1)派遣先への直接雇用の依頼(第30条第1項1号)
(2)新たな派遣先の提供(同2号)
(3)派遣元での無期雇用(同3号)
(4)その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置(賃金が支払われる教育訓練その他紹介予定派遣などによる雇用継続)

これにつき、(1)が功を奏しなかった場合には、(2)〜(4)を講じなければなりません。(則第25条の2第2項)
 
3.キャリア形成支援制度の義務づけ
 教育訓練の計画的実施・キャリアコンサルティングの体制整備が義務づけられます

(1)派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画
①雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること
②教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること
③派遣労働者のキャリアアップに資するものであること
④入職時の教育訓練が含まれたものであること
⑤無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること
(2)キャリアコンサルティングの窓口を設置していること
①相談窓口にはキャリア・コンサルティングの知見を有する担当者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者 等)が配置されていること
②相談窓口は雇用する全ての派遣労働者が利用できること
③希望する全ての派遣労働者がキャリアコンサルティングを受けられること
④キャリアコンサルティングは実施にあたっての規程(事務手引き、マニュアル等)に基づき行われるのが望ましい
(3)キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていること
①派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供の為の事務手引き、マニュアル等が整備されていること
(4)教育訓練の時期・頻度・時間数等
①入職時の研修は必須。キャリアの節目等の一定の期間毎にキャリアパスに応じた研修等が用意されていること
最初の3年間は少なくとも年1回以上の機会提供が必用。
②実施時間数については、フルタイムで1年以上雇用見込みの派遣労働者一人あたり、毎年概ね8時間以上の機会提供が必用
③教育訓練の実施にあたって就業時間等に配慮しなければならない

 
4.派遣先との均衡待遇の強化
 派遣労働者に対する待遇に関する事項等の説明義務
現行法の派遣労働者の賃金決定等における配慮義務をさらに進めて、以下に関して考慮した事項を派遣労働者からの求めに応じて説明する義務が加わります(第31条の2)。

(1)派遣労働者の賃金決定における配慮
派遣先にて同種の業務に従事する社員の賃金水準との均衡を考慮しつつ同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準 または 派遣労働者の職務内容・職務成果・意欲・能力等を勘案
(2)派遣労働者の教育訓練及び福利厚生の実施その他措置への配慮
派遣先にて同種の業務に従事する社員との均衡を考慮しつつ派遣社員への教育訓練及び福利厚生の実施その他措置を講ずる

これに対応する形で、派遣先には派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準等に関する情報提供の配慮義務(第40条第5項)が加わります。
 
5.個別契約書、派遣元管理台帳、就業条件明示書に以下の項目などが追加になります

(1)労働者派遣個別契約書    派遣就業の場所に加え、組織単位を明記
派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合の紛争防止措置
派遣労働者を無期雇用労働者又は60歳以上に限定するか否かの別
派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働者派遣に関する事項(有期プロジェクト等)
(2)派遣元管理台帳       派遣就業の場所に加え、組織単位を明記
無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの区別
第40条の2第1項2号(期間制限を受けない)の派遣労働者であるかの区別
教育訓練(厚生労働省令で定めるものに限る)を行った日時及び内容
キャリアコンサルティングを行った日時及び内容雇用安定措置の内容
(3)就業条件明示書       派遣就業の場所に加え、組織単位を明記
第40条の2第1項2号(期間制限を受けない)の派遣労働者であるかの区別
事業所単位の抵触日、派遣労働者単位の抵触日 ※第40条の2第1項2号の派遣労働者を除く
上記抵触日を超えて派遣受入をした場合に、みなし雇用が適用される旨
日雇派遣を行わないことが明らかな場合は、労働者派遣個別契約書、就業条件明示書、派遣元管理台帳、派遣先管理台帳において業務内容に相当する政令第4条の号番号(日雇派遣が可能な業務)の記載は不要となりました。(2016年7月26日以降の業務取扱要領)

 6.マージン率の公開方法

派遣事業所毎のマージン率は、常時インターネットにより関係者とりわけ派遣労働者に必用な情報が提供される方法での情報提供が原則

 

■派遣先への影響と対策
 
1.派遣期間制限の変更に伴う対応
 現行法の「業務」の期間制限から「事業所単位」と「派遣労働者単位」の期間制限に変更になります。
ただし、無期雇用の派遣労働者に係る労働者派遣は、いずれの期間制限も適用されません。※

※適用除外の派遣労働者(第40条の2第1項)
a)無期雇用の派遣労働者(派遣元に期間の定めなく雇用されている派遣労働者
b)雇用の機会が特に困難である派遣労働者等で厚生労働省令で定める派遣労働者(60歳以上を想定)
c)現行法での適用除外(有期プロジェクト、日数限定業務、産前・産後休業等の代替者)

 

● 事業所単位の期間制限
派遣先は事業所その他派遣就業の場所※ごとの業務について3年を超えて継続して派遣労働者を受入れてはならない
ただし、この期間は過半数労働組合等への意見聴取を行うことによって3年間更新できる(第40条の2を要約しました)
※事業所その他派遣就業の場所:工場、事務所、店舗等場所的に他の事務所その他の場所から独立していること
経営の単位として人事、経理、指揮監督、労務の態様においてある程度独立性を有すること
一定期間継続し施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即し判断する(業務取扱要領 p244)
 
● 派遣労働者単位の期間制限
派遣元事業主は派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位※ごとの業務について
3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行ってはならない(第35条の3)
※組織単位:名称のいかんを問わず、業務としての類似性・関連性がある組織であり、かつ、
派遣先の指揮命令者が業務の配分及び労務管理に直接の権限を有するもの

 
① 抵触日通知
改正法では、適用除外の派遣労働者でなければ「事業所単位」と「派遣労働者単位」の2つの抵触日が関係します。
このうちの「事業所単位」の抵触日について、派遣元へ通知をしなければなりません。(第26条第4項)
 
② 専門28業務(旧26業務)の撤廃への対応
現行法では専門28業務が期間制限の対象外とされていますが、改正法ではこれによる期間制限は撤廃されます。
これにより、これまで期間制限の対象外だった有期雇用で専門28業務を行っている派遣労働者があらたに下の③派遣労働者単位の期間制限3年の対象となります。
この期間制限を超えて派遣労働者を受入れると、違法状態となり、労働契約申込みなし制度の対象となります。
 
③ 事業所単位の期間制限への対応
事業所単位の期間制限は、最初に事業所で派遣労働者を受入れた日から3年となります。
この期間制限は、以下の手続によって延長することができます。

(1)派遣可能期間の抵触日の1ヶ月前までに厚生労働省令で定めるところにより、過半数労働組合や過半数代表者からの意見聴取をする
(2)意見聴取の手続において過半数労働組合や過半数代表者から異議が述べられた場合には、派遣可能期間の抵触日の前日までに説明する

過半数労働組合等との合意までは不要です。
上記の手続を怠った場合は、勧告の対象となり、これに従わなかった場合、厚生労働大臣は、社名等を公表することができることになります。
また、上記の手続によって延長した場合、速やかに新たな抵触日を派遣元に通知しなければなりません。
意見を聴取した過半数代表者が民主的な方法で選出されていない場合、事実上意見聴取が行われていないものとされ、労働契約申込みなし制度の対象となることがあります。
 
④ 派遣労働者単位の期間制限への対応
組織単位毎の業務について3年を超える期間継続して同一の派遣労働者を受入れることはできなくなります。(第40条の3)
上記に違反して役務の提供を受けた場合、勧告の対象となり、これに従わなかった場合、厚生労働大臣は、公表することができることになります。
また、この違法状態は、労働契約申込みなし制度の対象となります。
※ 組織単位:名称のいかんを問わず、業務としての類似性・関連性がある組織であり、かつ、派遣先の指揮命令者が業務の配分及び労務管理に直接の権限を有するもの
 
2.均衡待遇の推進、派遣労働者の能力に関する情報提供
①業務遂行に必用な能力を付与する為の教育訓練を実施する配慮
既にに派遣労働者が能力を有している場合等は除きます
 
② 同種の業務に従事する労働者の賃金情報の提供、教育訓練、福利厚生、施設の利用に関する配慮
 
※「配慮義務」について労働者派遣制度の見直し案に関するQ&Aでは、「実際に取り組むことが求められる」とされています
 
3.募集に係る事項の周知義務 (第40条の5)
① 派遣労働者への社員募集情報の周知方法の検討
派遣労働者への周知が義務になりますが、社内では通常は公表していない場合などは、この周知方法を検討する必用があります。
 
4.個別契約書、派遣先管理台帳に以下の追加項目などが追加になります

(1)労働者派遣個別契約書    派遣就業の場所に加え、組織単位を明記
派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合の紛争防止措置
派遣労働者を無期雇用労働者又は60歳以上に限定するか否かの別
派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働者派遣に関する事項(有期プロジェクト等)
(2)派遣先管理台帳
無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの区別
第40条の2第1項2号の派遣労働者であるかの区別
教育訓練(厚生労働省令で定めるものに限る)を行った日時及び内容